第9章 修行
思わずと言うか、つい口を出してしまった。
それを耳にした杏寿郎さんがぐりんと此方に顔を向け、じーっと見てくる。
「名前、君・・・今のは」
「えーと、何故か私、型の動き方とかが分かるみたいなんです。分かる、というか見える?」
例えるなら、紙の上に引かれた線を上からなぞる様な感じだろうか。
当然紙の上に引かれた線を、他の人が見る事は出来ない。
この不思議な現象は、自分でも良く分かっていないので、上手く説明出来ないのがもどかしい。
「これも例の力の所為なのでしょうか?」
「・・・君のその力は体に負担が掛かるだろう。大丈夫なのか?」
杏寿郎さんが心配そうに見つめてくる。
まあ、毎回顔色悪くしたり倒れたりしていれば、そういう反応になるだろう。
どれだけこの人に心労を掛けてるのかな、私。
本当に申し訳無い。
「今のところは問題無いみたいです。最近この力を少しでもコントロール出来ないかと思って、炭治郎君に瞑想のやり方を教えてもらったんです。それで炭治郎君達の稽古に混ぜてもらって瞑想しているんですけど、それのお陰ですかね?」
そう、実は杏寿郎さんのお膝の上で号泣事件(今思い出しても穴があったら入りたい)の次の日から一週間程、毎日二時間の修行もどきをしているのだ。
勿論しのぶさんにはちゃんと許可を得ている。
成果が出ているのかどうかは不明だが、取り敢えず今のところ、突然の時戻りを起こしていない。
「ふむ・・・そうか」
あれ、どうしたんだろう。
杏寿郎さんの相槌を打つ声が、心なしか少し低い様な。
というか、何か不機嫌そう?
「・・・杏寿郎さん、何か怒ってます?」
「別に怒っていない」