第9章 修行
「兄上・・・僕は、僕は!剣士になりたい!兄上と肩を並べて刀を振るいたい!」
「ええ!?」
千寿郎君の言葉に、私は驚いた。
だって、この子は剣士にならない道を進むと思っていたから。
実際私の存在しない世界では、千寿郎君は炭治郎君に剣士になるのは諦めると言っていた。
「どうかお願いします。今一度、僕に刀の色変りを試させては下さいませんか」
「千寿郎君、どうしてそんな急に・・・」
「分かったんです。僕に足りなかったものが、何なのか」
ギュッと拳を握り、千寿郎君は一層表情を引き締めると、杏寿郎さんに深々と頭を下げた。
一体この子の中で、どんな変化が起こったのか。
杏寿郎さんが生きている事や槇寿郎さんとの和解、そしてこの世界についてのお話。
どれが千寿郎君を、険しい剣士の道へと引き込んでしまったのだろう。
「兄上!お願いします!」
「・・・千寿郎、日輪刀をここへ持ってきなさい」
「兄上!」
「俺はお前の意志を尊重する」
「はい!」
千寿郎君はパッと顔を上げると瞳を輝かせた。
そうして突風の様に部屋から出て行った。
「杏寿郎さん、良いんですか?」
「む?」
杏寿郎さんは、本当は弟の千寿郎君は剣士に向いていないと思っていた筈なのに、どうして?
「うむ・・・そうだな」
相変わらずというか、思った事がそのまま顔に出ていたらしく、杏寿郎さんは苦笑しながら私の頭を撫でる。
「だが、弟の選んだ道を応援するのが、兄である俺の役目だ。俺は千寿郎を信じる!」
「杏寿郎さんがそれで良いなら、私も千寿郎君の事を応援します」
だけど、槇寿郎さんはどう思うかな・・・。
暫くして、大きな箱を抱えた千寿郎君が戻って来た。