第1章 死なせない
杏寿郎を死に追いやった鬼が憎かった。
自分の欲求のままに彼を殺し、逃げ去って行く姿が許せなかった。
私は炭治郎の悲痛な叫びに同調していた。
最初は怒りで半分我を失っていた為、何がどうなろうと構わない、ありったけの力を込めて鬼に叩き付けた。
それなのに、鬼はあんなボロボロの姿になってもすぐ元に戻るから、悔しかった。
だけど、無我夢中で鬼を攻撃する内に、段々と拳が当たる感触と鬼の傷付く姿が鮮明になってきて・・・怖くなった。
「何でなの・・・!」
腕に力が入らない。
力を込めようとすると、震えが走る。
「早く・・・!杏寿郎を助けないといけないのに・・・!!」
もうあの人が死ぬ姿を見るのは嫌だ!!