第8章 煉獄家
案内された部屋に入ると中央に四角いちゃぶ台があった。
四人分の伏せられたお茶碗とお箸が並び、既に幾つかの料理も小皿に盛られている。
「君はそこに座っていてくれ」
「煉ご・・・、きょ、杏寿郎さんは座らないんですか?」
煉獄さんと呼び掛けた私に、杏寿郎さんの隻眼がキラリと光り、慌てて呼び直した。
「千寿郎一人では運ぶのも大変だろうからな。俺も手伝ってくる」
「あ、それじゃ私も・・・」
「その腕で無理しなくて良い。直ぐ戻る!」
言葉通りに杏寿郎さんは、大量のおかずを抱えて直ぐ戻って来た。
その後、大きめのお櫃を三つ重ねて持つ千寿郎君と、汁物の鍋を持った槇寿郎さん(無精髭が剃られてた)がやって来て、ちゃぶ台に所狭しと目を見張る程大量の料理が並んだ。
何となく、箱膳じゃない理由が分かった気がする。
煉獄家の食事量が半端無い。
「美味しい!」
千寿郎君のお料理の腕は、杏寿郎さんが自慢したくなるのも頷ける程に素晴らしかった。
しかも、お茶碗を持って食べれない私の為に、態々ご飯をお握りにしてくれたりと、気遣いも凄い。
「こちらもどうぞ召し上がって下さい」
「ありがとう!これは何?」
「インゲン豆の白和えです」
「ん~これも美味しい!」
杏寿郎さんはいつもの「うまい!」を連発しながら次々食器を空にし、槇寿郎さんも黙々と料理を平らげていく。
そして、空になった器を素早く下げていく千寿郎君。
「千寿郎君、千寿郎君もちゃんと食べて?」
「ありがとうございます。ですが僕の事はお気になさらず、名前さんこそもっと召し上がって下さい」
心配無用とばかりに微笑む千寿郎君も、やっぱり煉獄家の人間だった。
彼の前にある料理も、見る見るうちに消えていく。
食事中の千寿郎君は甲斐甲斐しく皆の世話を焼いて、お母さんみたいだった。
あれ、この子何歳だっけ?