第8章 煉獄家
始めこそ私は、いつぞやのチンピラに絡まれた時とか、神社で刀を突き付けられた時みたいにオドオドしていたけれど。
一転して今は、猛烈に腹が立って仕様がない。
槇寿郎さんがこういう人だと分かっていたし、この人なりに思うところがあるのだろう。
だけど、直でこのやり取りというか一方的な罵倒と、それを黙って耐える煉獄さんの姿を見ていたら、私の中の何かがプツリとキレた。
「言って置きますけど、今の貴方と煉獄さんを一緒にしないで下さい」
「何・・・」
槇寿郎さんが煉獄さんの亡くなった後、彼の遺言を聞かされて自分の行いを悔い改め、立ち直った姿を見たからこそ思う。
何故煉獄さんが生きている内にそれが出来なかったのかと。
「煉獄さんは貴方とは違います!例え貴方の言う才能とやらが無くたって、煉獄さんは貴方みたいに立ち止まって蹲ったりしません!!」
怒りと悲しみから涙が滲み出し、ブルブルと腕が震えた。
「どんなに辛くても寂しくても、煉獄さんは真っ直ぐ前を向いて生きてます!・・・生きてるのにっ・・・どうして?何でっ貴方は・・・っ!」
遂には涙腺が決壊し、涙がボロボロと溢れ落ちた。
「何でちゃんと、自分の子供達と向き合えないんですか!貴方の・・・貴方と、大切な奥さんとの宝物でしょう?死んで欲しく無いって、生きていて欲しいって、どうして言えないのよぉーーーっ!!」