第1章 死なせない
杏寿郎は自分の目にしている光景が信じられなかった。
一般人らしき人間が鬼を遥か彼方へ殴り飛ばし、物凄い跳躍力でそれを追いかけて行った。
「す、凄い・・・煉獄さん、あの人は一体何者なんでしょうか。見た限りでは普通の人間に見えますが、匂いがかなり変わっていました」
「うむ、鬼殺隊では無いようだが。単独の鬼狩りであろうか・・・しかし、素手で鬼と渡り合うなど信じられん!」
隣で起き上がった炭治郎が、鬼が女性らしき人間に一方的に殴られている様子を凝視している。
「あの人、なんだかとても怒っているみたいだ・・・」
確かに、最初こそ静かに涙を流していたが、鬼が現れた途端に激昂していた。