第7章 協力者
それは、誰かの言葉が名前の頭の中に直接響いた事で、始まった。
『その世界の本来の流れを忘れてしまった名前に見せてあげる』
名前は眠っている間に、とある記録映像の様な物を見せられていた、と言う。
とても心を揺さぶられるその映像には、鬼と名前のよく知る人達が登場し、次々に傷付き倒れて行く。
最後には鬼は全て居なくなり、残った者達が新たな未来を繋いで行った先に、平和な世を生きる懐かしい面影を持つ人々の姿があった。
映像が流れ終わると、再び誰かの『めでたしめでたし』という言葉が名前の頭の中に響いた。
本当に?
優しいあの人達の犠牲の上に成り立つ世界が、本当に正しい結末なの?
「煉獄さんも、しのぶさんも、お館様も・・・皆死んじゃう。未来にどんなに幸せな結末が待っていても、居なくなってしまった人達はもう戻って来ないっ・・・」
折角止まっていた涙がまたポロポロと溢れ落ち、震える唇で声無く紡がれる『死なないで』という名前の心の声が、杏寿郎の胸に刺さった。
「・・・俺は生きている。君が救ったんだ」
名前の背に腕を回すと、杏寿郎はそっと抱き締めた。