第6章 彼女の力
「師範、さっきの子がまた来ました」
自身の継子であるカナヲに声を掛けられたしのぶは、戸口の方を振り返る。
見ればカナヲは腕に杏寿郎の鎹鴉を連れていた。
鎹鴉の要はバサリと一度大きく翼を羽ばたかせた後、朗々と語る。
「カー。蟲柱胡蝶シノブ。炎柱煉獄杏寿郎ヨリ言伝テ。今カラ名前ヲ連レテソチラへ向カウ、トノ事」
「まあ、名前さんは煉獄さんと一緒に居るのですか!?」
「えっ!?」
その言葉にしのぶは口許を手で押さえ目を円くし、横に居たアオイはツインテールを跳ね上げてズカズカと要に詰め寄った。
「ちょっと!名前さんは無事なの!?何処に居るの!」
身の危険を感じた要はカナヲの腕から窓枠に飛び移り『カー!』と一際大きく鳴いた。
「名前無事。神社ニ居タ。神社ノ鬼ハ全テ炎柱ガ撃退シタ。鬼ノ被害ハ軽微。カー!」
「神社?・・・ その任務、煉獄さんも行かれたのですか?」
しのぶの聞いた話では、今日の神社に巣くう鬼の討伐任務に赴いたのは、甲二名を含めた二十名の隊士。
そこに柱の存在は無かった筈なのだが。
というか、何故その様な場所に名前が居たのだろうか。
「・・・杏寿郎、巡回ノ途中デ急ニ神社ヘ向カッタ。理由ハ聞イテイナイ」
要はまるで人の様に肩を竦めて溜め息を吐くと、窓から飛び立っていった。