第6章 彼女の力
「この先の未来の事を考えるなら、協力者には柱が望ましいと思う。それからお館様も。あの人は先を読む事が出来るから・・・私みたいなズルッ子とは大違いの凄い人だし」
「ずるっこ?」
首を傾げる杏寿郎の頭上に「?」が浮かんで見えた。
「んー・・・私のはさ、皆みたいに自分で培った力じゃないし、お話の事だって元の世界じゃ有名っていうか・・・そもそも、今の記憶が無くなれば単なるお荷物だし、ね」
自分で言っておきながらアレだけど、ちょっと残念な私のスペックの低さに苦笑する。
「まあ、それはさて置き!・・・私は杏寿郎の態度があんまり変わらない事が驚きなんだけど?」
何か言いたそうにしている杏寿郎が口を開く前に、私は別の話題にすげ替えた。
「杏寿郎、さっきのお話ちゃんと聞いてた?」
「聞いていたが!」
「じゃあ何で驚いたり動揺したりしないの?」
「驚いているが!」
「・・・ホントに?だって私はここを架空の世界だって言ったんだよ?それでもってこれから起こる事とか、戦いの結末とかその後の話とか!」
杏寿郎はその瞳の所為もあるんだろうけど、考えてる事が全く読めない。
「君が俺の前に居る。俺にとっては名前の存在を受け入れた時点で、後の事は些末な問題だ」