第1章 死なせない
「ぁ・・がはっ・・・ぐ、ぅ」
・・・何だ?
何が、起こった?
殴り飛ばされた先にあった大木に激突したことで、漸く周りの景色が止まった。
猗窩座の身体はかつて無い程にズタボロで、両腕と片足が無い。
腹には人間の頭部が潜れそうな程の大穴が空き、首が妙な角度に曲がっていた。
人間ならば即死の状態ではあるが、鬼の自分にとっては何の問題も無い。
そもそも、日の光を浴びるか日輪刀で首を落とされない限り、鬼は死なないのだ。
一先ず腹の穴を塞ぎ、千切れた両腕と足を生やした。
首も元の状態に戻したところで、自分が飛ばされて来た方角に視線を向け様としたその時。
「何勝手に治ってんの?大人しく死になさいよ、このカス」