第6章 彼女の力
「君は・・・よもや、記憶が戻ったのか!?」
「うん。多分、今だけだと思うけど・・・」
「今だけ?それは、どういう意味だ?」
「うーん、私の願いを叶えてくれた存在の、粋な計らい・・・みたいな?」
「うむ、全く分からん!」
「だよね・・・」
名前は右手を伸ばし、眼帯越しに杏寿郎の左目をそっと撫でる。
「ごめんね、杏寿郎・・・あんなに綺麗な眼だったのに・・・」
「何故君が謝る?これは俺の未熟さに寄るものだ」
「ううん、私の所為だよ。私は杏寿郎を助けたくて、この世界に来たの。アイツ等をやっつける力を貰ってね。でも、私の覚悟が足りないばっかりに、杏寿郎の片目は失われてしまった・・・だから、ごめんね」
名前は悲しそうに杏寿郎の左目を撫で続けた。
「君はいつも謝ってばかりだな」
「そう、かな・・・うん、そうかもね。私は臆病者だから」
「む?君は臆病者ではないだろう」
杏寿郎は瞳を伏せて苦笑する名前の、自分の左目を撫でていた手を取り、グッと引き寄せた。
「あの時、鬼の攻撃から俺を守ってくれたではないか。俺が今も刀を振るい続けられるのは、君のお陰だ。ありがとう名前」