第6章 彼女の力
『さて、君はどうしたい?』
ーーーどうって?
『もう一度あの世界へ行くか、この場所に留まるか、それとも元の世界へ戻るか。名前はどれを選ぶ?』
ーーー私は・・・杏寿郎に会いたい。
もう一度あの世界へ行きたい。
『ふふふ。君はそう言うと思ってたよ。それでこそ名前だ。良いよ、あの世界へ行っておいで。但し、向こうへ行ったらここでの事は全て忘れてしまうからね』
ーーーありがとう。
『ああ、そうそう。君に与えた力、折角だから今度はもっと上手く使える様に頑張ってね・・・何?どうかしたの?』
ーーー向こうへ行く為の取引、今度はアナタに何をあげれば良い?
私がアナタにあげられる物、未だ何か残ってる?
『・・・ふふ、あはははは。君のそういう律儀なところ、好きだなぁ。うん。大丈夫、もうもらってるよ?』
ーーー??
『ふふふ。ねえ名前、無限に在る世界の中で、いつか君の望む世界へ辿り着いた時、また会おうね』
ーーー私の、望む世界?
『さあ、そろそろお別れだ。名前、君の大切な煉獄杏寿郎が呼んでるよ』
暗い水の中に居た身体が、何かに引っ張られる様にぐんぐんと浮上していく。