第6章 彼女の力
意識のある隊士達が全員耳を塞いだ瞬間、体長五メートル程の黒蛇鬼が啼いた。
シューシューと低く掠れた様な音が周囲に響き渡る。
唯一反応の遅れた名前が、黒蛇鬼の紡ぐ音を直接聞いた途端にバタリと仰向けに倒れた。
「苗字さん!」
福田が名前に手を伸ばすが、空かさず白蛇鬼が酸を放つ。
咄嗟に身を捻って攻撃を躱し、福田は再び刀を構えた。
「くっ・・・」
赤黒い蛇鬼を見ると、先程一人の隊士が首を斬り落とし損ねた傷が既に無い。
四体の蛇の鬼は互いを守りつつ連携した攻撃を繰り出してくる為に、福田達は攻めあぐねていた。
「炎の呼吸 壱の型 不知火!」
ざんっ!
一番大きな個体である青黒い蛇鬼の首が宙に舞う。
鬼の身体は切り口からザーッと灰に変わり崩れ落ちた。
「炎柱様!?」
「皆、無事か!後は任せろ!」
膠着状態だった戦いの場は、突如現れた杏寿郎の一撃によって崩された。
杏寿郎はそのまま次の獲物へと斬り掛かり、酸を放つ白蛇鬼の攻撃を紙一重で躱し、すり抜け様に赤い蛇鬼の首を一撃で斬り落とす。
「おのれぇ・・・おのれ鬼狩りぃ・・・!」
黒い蛇鬼が再び大きく息を吸い込み、喉を震わせてシューと大きく啼いた。