第6章 彼女の力
「苗字さん!?」
「一般人か!?何でこんな所に!」
福田が意識の無い乃木を抱えて酸を飛ばしてくる鬼の攻撃を凌いでいると、戦いの最中いつの間にか姿を眩ましていた青黒い大蛇の鬼が、口に名前を咥えて現れた。
ボトリと鬼の口から落ちた名前は小さな悲鳴を上げて、鬼から距離を取る為に尻を付いたままズリズリと後ずさる。
その様子を見た別の隊士が焦って名前を助けようとするが、他の鬼の攻撃を受けて近寄る事が出来ない。
『見つけた・・・』
『見つけた』
『見つけた、あの御方が探している人間』
『やれ、嬉や』
大きさと色が各々違う蛇という見た目の四体の鬼が名前を見つめて口々に言う。
「おい!何の事だ!」
「鬼の戯れ言を聞くな!水の呼吸 壱の型 水面斬り!」
赤黒い鱗を持つ比較的小さい蛇鬼の首に、隊士の一人の水色の刃がザックリ食い込んだ。
赤黒い蛇鬼はギャッと声を上げると、尾を振り回して暴れる。
「そうだ!早くあの女性を助けないと・・・うわっ!」
追撃を掛ける隊士達に、白くて一番小さい蛇鬼が口から酸を飛ばしてきた。
酸は身体を捻って避けた隊士の後ろの木に当たり、木の表面がドロリと溶ける。
「っ!皆、耳を塞げ!!」