第6章 彼女の力
すぐ隣に鎹鴉の華代さんが居てくれるが、夜の神社で一人きりは怖い。
いくら月が明るいとはいえ、街灯が一本も無いなんてあんまりだと思う。
それに、やっぱり福田さん達が心配だった。
耳を澄ますと、彼等が必死に戦う音が聞こえてくる。
「ねえ、華代さん」
「ナアニ?ソロソロ歩ケル?」
「あ、うん・・・」
グッと足に力を入れると、多少フラつきながらも立ち上がる事が出来た。
チラッと奥社の方角へ視線を向けたその時、華代さんが「カァーーーッ!」と激しく鳴いた。
「逃ゲテ!鬼ガ来タ!」
「え?」
突然フッと身体が宙に浮いたと思ったら、物凄い力で奥社の方へと引き寄せられる。
華代さんがカァー!カァー!と何かを威嚇していて、何が何だか分からない内に、ドサリと地面に投げ出された。
痛みに顔をしかめながら起き上がろうとしたら、何かに首をべろりと舐められた。
「ひっ」
そこには一本の角を生やした大蛇が居た。
青黒い鱗に覆われた身体は体長八メートル位。
通常の人間の二倍はあるだろう三角形の大きな顔と、そこから伸びた二股の長い舌がチロチロと揺れている。