第6章 彼女の力
暗い森を風のごとく駆け抜けた先に、目的地である神社の鳥居が見えてきた。
「え、炎柱様!?」
神社の入り口付近で待機して居た隠の一人が、杏寿郎の姿に驚いて両の目をこれでもかと見開く。
治療の準備や担架の準備やらに追われていた隠達も、突然の炎柱の登場に動きを止めて、口々に「炎柱様が来てくれた!」と嬉しそうに騒ぎ出す。
「あの、何故こちらに?」
「今は俺の事はどうでも良い!それよりも状況は!」
「は、はい、鴉からの報告では鬼は四体。ですが鬼は本来群れないので、一体が分裂しているのではないかと。向かった隊士は各々五名ずつに別れて鬼と交戦中ですが、鬼の血鬼術に囚われ既に半数以上が戦闘不能。至急増援を要請しようと・・・」
「俺が来たからには剣士の増援は不要だ!しかし怪我人の救護にはもっと人手か必要だろう!」
「は、はい!先程本部と蝶屋敷へ鴉を飛ばしました!」
「うむ!迅速な判断だ!」
「それと、どうやら奥社の方に一般人らしき者が紛れていると・・・」
「一般人?・・・相分かった!」
杏寿郎は少し首を傾げつつも、返事をすると同時に地を蹴った。
時を遡る前に、この神社での鬼との戦闘の詳細は粗方聞いている。
杏寿郎は走りながら耳に詰め物をし、予め鬼の血鬼術である音が聞こえない様にした。