第6章 彼女の力
「あ、あの!私の事は此処に置いていって構いません!彼を追って下さい!」
「そんな訳には・・・」
「福田さんは鬼をやっつける為に来たんでしょう?だったら早く行って下さい!」
「・・・分かったよ」
福田は苦虫を噛み潰した様な顔で頷くと、屈んで名前を近くの石段に下ろした。
「華代さん!」
福田が呼ぶと、何処からともなく鎹鴉が飛んで来て彼の肩に留まる。
「ナアニ聡」
「苗字さんの側に居てあげて。彼女が歩ける様になったら、隠が居るところまで案内してやってくれ」
「分カッタワ」
華代と呼ばれた鎹鴉は首を縦に振ると、福田の肩から名前の隣にピョンと飛び降りた。
「それじゃ苗字さん、気を付けてね」
「それは私の台詞ですよ。福田さんの方こそ気を付けて下さい。それと、ありがとうございました」
名前の言葉に福田は苦笑すると、その場で踵を返して走り去る。
あっという間に遠ざかる福田の後ろ姿を見つめる名前の胸中に、漠然とした不安が過った。
「どうか、皆無事に・・・」
石段に座りポツリと呟いた名前は、微かに震えていた。