第6章 彼女の力
「苗字さん、一先ず此処から離れよう。立てるかい?」
そう言って福田は名前に手を差し出した。
名前はコクリと頷いて福田の手に掴まるが、腰が抜けているらしく立ち上がれない。
見かねた福田は名前に自分の背中に乗るよう促し、名前を背負ってから乃木を振り返る。
「乃木、僕は苗字さんを隠が待機している神社の外れ迄連れて行くから、君は一度合流地点に戻って待機ね」
「分かりました」
「この神社は鬼の狩り場だ。油断しちゃいけないよ」
「はい!」
「それじゃ苗字さん、行くよ」
「は、はい」
と、その時、少し離れた場所から多数の悲鳴が聞こえた。
「ふ、福田さん!今の声は!?」
「奥社の方からだね・・・」
「鬼が現れたのか!?福田さん!俺行ってきます!!」
「待つんだ乃木!」
奥社の方へ向かって走り出す乃木を福田が呼び止めるも、乃木の足は止まらなかった。
乃木の階級は『丁』の福田より低い『壬』なので、一人で行かせるには危険過ぎると思いつつも、このまま名前を連れて乃木の後を追う訳にもいかず、福田は低く唸る。