第6章 彼女の力
「どうした!乃木!」
「あ、福田さん!こっちに不審な女が居て・・・」
「不審な女?」
浅葱色の羽織りを着た男が名前達の元へ走って来る。
新たな隊士の登場に名前が恐々視線を向けると、そこに見知った顔を見つけた。
言葉こそ余り交わした事はないが、福田と呼ばれたこの青年は最近蝶屋敷で十日程入院しており、名前は食事の配膳や洗濯物の回収等で彼と接触している。
「ん?君は確か、蟲柱様のところの・・・苗字さん、だったかな?」
福田も名前の事を覚えていたらしく、少しだけ不思議そうな表情を浮かべた。
「福田さんの知り合いですか?」
「ああ、この間蝶屋敷で療養していた時に少しね。・・・苗字さん、僕の事を覚えているかい?」
何故名前がこの様な場所に一人で居るのか不明だが、彼女の怯えを感じ取った福田は、名前の前に膝を付いて優しく声を掛けた。
「はい・・・覚えて、ますぅ~・・・っ」
安堵から名前はボタボタと涙を溢し、そんな名前の頭を撫でながら、福田は乃木に対して何かあったのかと視線で問う。
「こんな時間帯に女が一人で居るから、鬼かと思って・・・」
つい刀を向けてしまった、と答える乃木に福田は小さく溜め息を吐いた。