第6章 彼女の力
どさ。
静かな闇に閉ざされた神社の境内、何も無い空間から突如として名前が転がり落ちてきた。
「い、たぃ・・・」
暫くして、名前は痛む頭を擦り呻き声を上げながらむくりと起き上がった。
月を隠していた雲が風で流されて、月明かりが闇を照らす。
「・・・は?え、外・・・?」
夜空に浮かぶ丸い月のお陰で、夜目の利かない名前でも周囲の様子が判別出来る程度には視認出来た。
石畳を等間隔に石灯籠が立ち並び、立派な鳥居の先には長い階段が続く。
「何ここ、神社?」
ぺたりと砂利道に座り込んだ状態のまま、名前は不安そうに辺りを見回した。
何故自分がこの様な場所に居るのか、側に居た杏寿郎は何処へ行ったのかと名前は必死に考える。
「おい!お前、今何処からやってきた!」
「ひっ!?」
突然背後から首筋に刀を突き付けられ、名前は竦み上がった。
逆らう意思は持っていないとばかりに固まって震えていると、名前に刀を突き付けたまま黒い詰襟に白いベルトを締めた黒い袴という鬼殺隊独特の格好をした男が彼女の正面に立つ。
「お前・・・人間、か?」
「に、人間、です」
震えながら名前が答えると、男は鋭い視線はそのままに、ゆっくりと名前の首筋から刀を退いた。