第6章 彼女の力
普段の笑顔も快活さも鳴りを潜め、淡々と語る煉獄さんはちょっとだけ怖い。
何となく彼の顔を見ていられなくなり、俯いてふらふらと視線を彷徨わせると、いつの間にか後藤さんも癸の隊士さんも部屋から居なくなっていた。
「え、と・・・分かってる、つもり、です」
片腕で抱えていた新しい包帯の詰まった籠を抱え直しつつ、モゴモゴと私は答える。
蝶屋敷で過ごすようになってからそこそこ経つし、その間に怪我をして運ばれてくる隊士さんをよく目にしてきた。
今日みたいに怪我人が大勢の時もあったし、最近は出きる範囲で手伝ったりもしている。
最初は血を見るだけで怖かったけど、今はかなり慣れてきたと思う。
流石に四肢が欠損しているのとかは、未だ直視できないけど。
私は自分の目で現場を直接見た事がない。
誰かが話しているのを聞く事はあっても、実際の鬼がどんな風なのか、どうやって鬼を退治しているのか、何も知らない。
煉獄さんが、死んじゃう『夢』なら見た事はあるけど、あれは飽くまでも夢だ。
チラッと煉獄さんの顔を見上げると、彼はじっと此方を見ていた様でバチッと目が合ってしまい、思わず肩が跳ねた。
と、その時、プツリと私の意識は途切れた。