第6章 彼女の力
「ありがとう煉獄さん。私、この力で少しでも役に立ちたいんです。煉獄さんや鬼殺隊の皆を助けたい。それ位しか私には出来ないから・・・」
「だが名前、今はまだ君にその力を極力使わせたくないと俺は思っている。時戻りは君に負担が掛かり過ぎだ」
「別にちょっと疲れるだけで、煉獄さん達に比べれば大した事は「先日も倒れただろう?」う・・・」
名前は往々にして自分を卑下したがるが、杏寿郎は彼女のひたむきな姿を知っている。
隊士でもない普通の女性が、痛みに耐えながら懸命に機能回復に励み、怪我が完治していないのに自らが動ける精一杯で屋敷の手伝いをしている。
杏寿郎は視線を合わせる為に屈むと、名前の肩を掴んだ。
「君は自分が思う以上に努力している。今は出来ずとも、きっとその力を御する術を持てると俺は信じている。だから、焦らなくていい」
「煉獄さん・・・」
名前の瞳がユラユラと揺れている。
どんなに鬼を狩り続けても、新たな鬼が人を喰う。
この手から零れ落ちた人の命は数え切れず、その都度杏寿郎は己の不甲斐なさに打ちのめされてきた。
今この瞬間も何処かで誰かが傷付き、命を落としているかも知れない。
鬼の首領である鬼舞辻無惨を滅しない限り、鼬ごっこの如くそれは永劫続くのだ。