第10章 いくつかの誤解
12月にももうすぐという季節にしては比較的暖かい、和泉さんとの約束の日。
待ち合わせ場所に向かっていた途中、着信に気付いた。
道の脇に避けてからスマホを取り出すと遥さんからの着信は切れた。
今週末に和泉さんと会うという事を彼は知っている筈だ。
『話すのはいい。だが工藤とは寝るな』
確かそう言っていた。
そんな事を心配してるのだろうか?
『和泉さんとはただ話すだけなので、遥さんは心配しなくていいです。だってもう私は』
その続きを打とうとして指が止まる。
私の心が属してるのは。
『遥さんは心配しなくて大丈夫です』
前後を消して、結局そんな中途半端な一文を送信した。