第10章 いくつかの誤解

自宅からそう遠くない、待ち合わせ場所のカフェ。
ドアを押して店内を見渡した時に自分の目を疑ってしまった。

「…………」

席に着いていたのは二人。
和泉さんと、こないだの、女性。

軽く髪を巻いた、スタイルが良くて大人っぽい女性。


ここに来てまで見せ付けなくても。
もう分かってるのに。

不思議と思っていたよりも動揺のない自分に驚きつつもそのテーブルに足を向けた。
それでも気分が重いのは常識で考えて気まずいというだけの事。


「旭ちゃん、久しぶり…ってのも変だね」

和泉さんがいつも通り目を上げて私に向かって微笑んだ。

「…………？」

その様子に違和感を感じる。
ゆったりと話す事の出来そうな落ち着いた場所だった。
重い椅子を少し引いて私は並んでいる彼らの向かい側に座った。

テーブルの上に色々なパンフレットみたいなものが並んでいる。

これは……？


「早瀬旭さん、はじめまして。 私はこういうものです。 この度はおめでとうございます」

その女性は品の良さげな笑顔を浮かべ私に金色の装飾がされた名刺を渡してきた。