第10章 いくつかの誤解
「やっと都合がついたから。 夕方から二人でゆっくりしよう」
久しぶりの画面の向こうの和泉さんの顔。
それが何処か遠くに見えた。
「……和泉さん、先週には日本に居たの、私、知ってます」
彼は一瞬目を見開いて、何で知ってるの? と尋ねてきた。
「街中で見掛けたので。 声をかけようとしたけど……女の人、が」
そして私は遥さんと再び体を重ねた。
求められて屈服させられるよりも、私は確かにあの時遥さんが欲しいと思った。
内に留まっていた彼の熱は暫くの間私をも熱くさせた。
それから無言になった私に和泉さんはとにかく会って話をしよう、と告げてきた。
「…………」
それを了承した。
どちらにしろ私もそう思っていた。
だけど和泉さんと私の関係。
もうどうにもならないものの様な気がしていた。
まるで絡まって途中が綻んだ、細いネックレスのチェーンみたいに。