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Honeymoon

第13章 余話


「あさひちゃん? そんな小さいのによく性別分かりましたね」

「普通に分かる」

飯を食い終わった犬をまた手に乗せてみる。
じっとしながらも相変わらず白い毛の奥の瞳がこちらの表情を観察していた。

「似てるなー。 貰い手無かったら俺んとこ来てもいいぜ」

嫌がるように手のひらから逃げ出そうとする子犬。
落ちるって。 思わず口元に笑みが浮かんだ。

「そういや、今日は金曜か」

旭と別れてから毎週末あの店に顔を出していた。


「………」


最初店で見た時は工藤が家族に話してた通り、大人しそうな印象だったけどな。

意外と度胸はあるし言う事も言うし、若干天然で鈍い癖に譲らない。
控え目で否定的な声から滲む彼女の熱さと湿度。

そんなものまで潤んだ瞳に込めながら、必死で踏み留まろうとしてるとことか。

気付いたらうっかり初日からハマってた。


二か月経った今でもどうしようもなく会いたいし欲しい。
単純に知りたい。甘やかしたい。泣かせたい。触れたい。


とはいえ。

「手に入ったら入ったでまたこっちが無茶しそうで怖いが」

今度逃げようとしたら縛り付けて監禁でもしそうだ。


だからぐっと堪えて彼女から来るのを待つ。
そしてもう二度と離れようなんて気が起こらない程体中に俺を刻む。
迷う隙なんか今度は与えてやらない。

どうするかは旭、お前が選べ。
俺の優しさなんてここまでだ。

「そうなったってお前が悪いんだからな」

まるで目の前に彼女が居るかのように呟いた。

そうすると俺の目線まで両脇を抱え上げられた子犬が決まり悪そうに目を逸らした。




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