第8章 ふたりの嘘
「動物が好きなんですか?」
「好きだな。 ガキん時デカい犬飼ってたし」
私の仕事の事を話すと俺には絶対無理だろうけど旭らしい、と納得していた。
「私らしい?」
「物事の辻褄合わせようとする所。 たまに理屈が先走ってそれが目的んなったり本末転倒になるタイプ」
「…………」
言い返せない。
この人は見てない様で他人の行動や表情を色々見てる。
あと、反応が早い。
こちらの何も考えないで発した言葉や目線にもすっと入り込んでくる。
初めは他人の話なんて我関せず、という印象だった。
こんなのも仕事柄、なのかな。
話の通じない動物等を相手にしてるとそういうのが鋭くなるのだろうか。
でも分かっててやってるのなら余計にタチが悪いと思う、んだけど。
『ちょっと仕事の関係でね』
電話での和泉さんの言葉。
こんな遥さんの仕事と何の関連があると言うのか。
……あれも嘘だった。
「和泉さんの事、何で知ってたんですか?」
「兄弟だから」
思わず持っていたバッグを取り落としそうになり、おっとと遥さんが屈んでそれを受け止めた。
「は………でも、苗字が」
「母親が違う。 俺は母方の姓を名乗ってるし、正妻は向こう。 認知はされてるけどあの家に入ってんのは奴の方だ。 あいつが結構な家柄ってのは知ってんだろ?」