第8章 ふたりの嘘
もちろんやんのでも俺は大歓迎だけど、すかさず付け加える彼の背中をバシバシと叩いて遥さんが笑う。
やっぱりやっぱりそうなんじゃないの。
一人で考えた方がいいかと思ったけど。
先程のショックが嘘のように落ち着いている。
だけど。
「港の方でも行ってみるか」
遥さんが先に歩き出した。
『俺もちょっとは他人の事は言えないか』
確かにそうなのだろう。
そして私も。
「遥さんありがとうございます。でも私、ちゃんとするまではこういうのは止めておきます」
「ちゃんと?」
「ちゃんと色々ハッキリして納得するまでは」
「そっか」
「はい」
まだ私は和泉さんと話してない。
何か事情があるのかもしれない。
そして僅かでも、そんな可能性があるのなら。
遥さんが優しげな目をしていたので私もそれにつられて口角を上げた。
「旭、分かった様な顔して分かってないな。そもそもあんたに会いにわざわざ呼び出したのは俺。最初ん時みたいにまた無理矢理拉致られたいか?」
こちらの反応を楽しむかの様に彼が笑顔のままで少し首を傾げた。
「……遥さんのそういう所、嫌いです」
「後は好きなのか。 そりゃ嬉しいね」
グダグダ言ってないで行くぞ、私の手をぐいと引いて彼が歩き出す。
あ。
手、繋がれてる。
今更ながらにとくんと心臓が鳴った。