第7章 その『理由(わけ)』
初めてのデートでお付き合いを申し込んでくれた和泉さん。
酔った勢いで何となく体から、でもない。
LINEでふと寂しくなって人恋しく、でもない。
始まり方で終わり方が決まる、と私は思っていた。
だってあまりよく知りもしない人に好意を伝える、それはとても気力と勇気の要る事だ。
「なぜ私なんかに、ですか?」
「うーん。 空気感、とか。落ち着いてそうに見えて実は表情豊かな所とか、多分色々なんだろうけど、ね。 心地良いパートナーになれそうな気がして」
和泉さんはそう言ってくれた。
嬉しかった。
背中を押してくれた香織に感謝した。
ほんの数カ月前の、そんな事を思い出しながら。
『理由がないなら断る理由も無い』
『ここに来てまだ何か理由が必要なのか』
いつもそうやって『理由』を探すのが私の癖なのに気付いた。
だってそうじゃないと責任が取れないから。
順番通りに進めなくなるから。
…言い訳が出来なくなる、から?
むしろ、彼らは何故『理由』が要らないなんて思うんだろう。