第6章 二夜…裏腹な私と彼
それにしても今日の彼は穏やかだ。
「……………」
ベッドの上で座っている私たち。
白のシーツに腰から下が隠れている。
彼の機嫌を損ねたくなかった。
のろのろと自分でそこに手を伸ばす。
よく分からないけど、でも多分。
「…ん………」
触れてみた自分の手が止まった。
何、これ。
お漏らししたみたいなのがショーツ越しでも分かる。
少し湿っていたのは知っていたけど。
「どうなってる」
すり、と彼がこちらの答えを催促する様に私の腿を撫でてきた。
それで涙がこぼれたのは何故だろう。
自分のそんな反応にがく然として?
また痛くされるかと思って怖くて?
「旭?」
「何で……私」
腿の上の彼の指先に少し力がこもって体がビクッとなった。
「ごめんなさい……でも、分からなく」
彼と距離を取ろうと後ろ手をつくと逆に引き寄せられた。
頭に回された腕で遥さんの肩口の辺りにぐいと押し付けられる。
痛い、けれど鼻をぶつけた程度。
この人は普段、何かつけているのだろうか。
少しだけ甘い残り香がする。
「あー……もう、あんたってホントめんどくせ」
いつもより大きな声。
何かに苛立っているみたいな。