第6章 二夜…裏腹な私と彼
彼のマンションの6階。
またここに来ると思わなかった。
真っ直ぐ寝室に向かい羽織っていた濃紺の上着とTシャツを脱ぐ。
「寒いか?」
薄いニットの前を閉じ戸口に居た私にそう声を掛けてきた。
「……遥さん、私」
「ここに来てまだ何か理由が必要なのか。俺が善人じゃない事位は分かるだろ?」
「……酷くしないで下さい」
何と言えば良いのか分からなかったけど、それだけ。
指輪は自宅に置いてきた。
そしたら少しの間我慢をすればいい。
「服を脱いでこっちに来い。旭がすぐに熱くなるのは知ってる」
その前に顔が熱くなった。
我慢を、すれば。