第5章 その日から二週間
だけど帰宅して直ぐ、私は驚きとまた絶望に自分の目を疑った。
スマホに着信がふたつ。
三日ぶりの和泉さんからの返信だった。
今ドイツに居る彼は時差のせいでなかなか私に連絡が出来なかったという。
LINEだとどうしても声が聞きたくなってしまうから、といつもなら口許が緩んでしまう内容だった。
橘遥(たちばなはるか)。
その簡潔で風流というか、中性的な氏名の主。
普通に名前を思い出そうとすると時間がかかったと思う。
だけどその前に添付されていた短い動画でそれが直ぐにあの男のものだと分かった。
10秒足らずのそれには、あの部屋の出来事の一部が収められていた。
裸の男女が横に折り重なり甘い声を上げている、顔を背けたくなる画の、その女性は確かに私だった。
『二週間後の金曜、9時にあの店で』
そんな短いメッセージ。