第4章 一夜…恐れと嗜虐
どうしても、合わさった所に力が入ってしまう。
少し力を弛められて上体を支えようとする腕がかくかくと震えては崩れた。
不自由さ、戸惑う気持ち。
体は窮屈で息苦しく、自分で無いものに支配されている。
これらに向かってずりずりと手を伸ばしてくるのは何だろうか。
執拗な先端の動きを与えられ続け、鋭い感覚が私という存在を覆い始める。
「そんなに力まないでいい」
最初に私が彼を睨んだ時と同様に、何かを好ましく思っている、彼の声色。
この状況を、だろうか。
「い、っ…」
少し角度をズラされた。
隙間無く収められているために彼の僅かな動きにも過剰に反応してしまう。
引っ掛かりを擦り付けた。
それからトントン、トンと軽く小突く様にノックする。
「んく、や、止めッ」
反れそうになる体を捕まえた男。
全てが一方的だった。
今唯一動きを許されているのは五感と、四肢の先端。
軋んでもいないベッド。
だけど粘膜が擦れ合うその熱がシーツを掴み私の爪を立てさせる。
「あぁっ、…あぁっ」
また暗い思考の中で長い手がこちらに伸ばされる。
波のように押し寄せてくるそれを噛み締めて堪えると、その手が僅かに引いて凪いでくる錯覚を覚えた。
そうやって見えないものにでも縋っていないと私の何かが崩れそうだった。