第3章 攫われて
そしてこれが、先程から私も彼に同調する様にはしたなくなっている理由の一つだ。
自分でこんなにも興奮している異性がいる。
そんなものを今まで意識した事が無かった。
意識をしてもそういう間柄でも無い限り、嫌悪感しか無かった筈だ。
早くこの場から逃げ出したかった。
「私をどうする、つもり…なの」
「この状況でそんな事を聞いてどうする。尻を触ってるだけで涎が垂れてきてるぞ」
くく、とこちらを馬鹿にする様な声。
何度か噛み過ぎて痛み出した唇を固く合わせた。
何故なのかは分からない。
悔しいけれど、先程のように性器に直接触れられていたら話など出来なかっただろう。
その代わりに内腿やお尻といった肌の薄い部分を、まるで間に一枚薄膜でも挟んでいるみたいに手のひら全体で撫でられ続けた。
そうやって私を扱うと思ったらまた貶められる。
「ああ、でも残念だが余り優しくする気はないかな。 泣き叫んで悦ぶ女を見て滾るのはそう珍しい趣味でもない。だからあんたに目を付けた」
優しくしない、それ以外の彼の話の内容が分からなかった。
こんな事を悦ぶ?
私が?
私の何を知ってるの?
「何の接点で…? 意味が分からない」
「工藤が戻ってくる頃には『そう』なってるだろう」
この人は、何をどこまで知ってるのだろうか?
話の内容よりそちらの方に恐れをなした。