第3章 攫われて
なぜ私の名前を…? 霞のかかる頭でぼんやりとそんな事を疑問に思った。
指先が更にぐっと奥に入り、薄い粘膜に包まれた私のささやかな突起を軽く擦った。
大きな声が出そうになって慌てて口を塞ぐ。
「んぐ……」
「クリトリスも乳首みたいに敏感なんだろう。じっくり可愛がろうと思ったのに、旭が俺の言う事を聞かないからだ」
れろ、と彼が熱い肌に舌を這わす。
一方私を嬲っていた指たちは内腿へと離れた。
「ぁ…や、めて……私が婚約してるのを、知ってるんでしょう」
「それがどうした? こんな唆る体を放っておく方が間抜けなんだ。……ああ、もしかして工藤にとってはあんたを抱く気が起こらない、とか」
「………!」
『あんたを抱く気が起こらない』その言葉だけが耳に残った。
「パッと見、あのバーに居た連れみたいのならともかく、あんたの方はおよそ色気なんか無さそうだったしな」
私はぐっと唇を噛んだ。
確かにそう。
「………」
会社帰りの地味な格好でいた私。
あの場所で明らかに浮いていた。
だけど仮に会社帰りじゃなくってもそれは同じ事だ。
そして香織みたいに彼氏が途切れないどころか、こんな私に婚約者などが出来たこと自体が奇跡なんだ。
だから大事に思っていたのに。
大事にしたいと思っていたのに。
「だが俺にとってはあんたは堪んないね。そっからでも分かるだろ?」
彼の腿に乗っている私。
その私の丁度潰れた胸の辺り。
おそらく彼の興奮した雄の証が大きく主張しているのがジーンズ越しからでも分かった。