第10章 いくつかの誤解
「で? また暴力でどうにかする気か!? 今回俺と旭は正式に婚約してるし、双方の家にも話はしてある。 ここで弱い立場なのはお前だ!」
「うるせえなサイコパス野郎。 俺が黙って見てただけとでも思ってたのか」
彼が手元に持っていた茶封筒。
その中身を片手で和泉さんに向かって投げつけた。
その拍子に、書類や写真がバラバラと床に散る。
床に散見したそれら。
誰かの入院履歴や診断書……?
目を覆いたくなる様な、顔に傷を負った女性。
外国人女性との……その行為に及んでいる写真。
それを見て和泉さんの顔色が変わった。
「揉み消してもこういうのはかき集めれば、今時はいつでも社会的にあんたを抹殺出来る。 警察庁管轄の機関に属してると色々便利でな。 そっちこそ出張中も向こうの女と何してた? そのハード過ぎるSMプレイの証拠と一緒に俺を訴えるか」
「…ッ!! ……何が望みだ」
口の奥で歯をぎり、と噛み締めている様な音が聞こえた。
怒る人と怒らない人がいると思う。
……正確には理性を保てない人とそうでない人。
私は今まで和泉さんは後者の人だと思っていた。
そして前者は遥さん。