第39章 ホテルの鬼
杏「桜、もう少し目立たない服の方が良かったのではないか。」
「う……はい、そうですね…。でも………と、とっても格好いいですよ。」
欲望を優先してしまった桜が申し訳なさそうに眉尻を下げながらも頬を赤らめると 杏寿郎は首を傾げてその様子を見てから微笑んだ。
杏「その様に赤く愛らしい顔で褒めて貰えて嬉しいが 俺が言ったのは君の服の事だ。…きりが無い。」
そう唸る様に低く言う杏寿郎が微笑みながらフロント内の男性スタッフに燃える目を向けた為、既視感を覚えた桜は慌てて背伸びをしながらその目を両手で覆った。
それに杏寿郎が不満そうな声を上げる。
「杏寿郎さん、殺気はだめですよ…!鬼に分かられてしまいます…!!」
杏「そうか!ありがとう!!」
「いえ、私の服のせいなら選んだ私のせいです。…黄色の方がよかったかなあ……。」
そう言いながら眉尻を下げ、スカートを軽く摘んで全体を見ようと体を捻ってワンピースをひらひらとさせると杏寿郎がガッと桜の肩を掴む。
「ひゃ…っ」
杏「君は何も分かっていないな!!それが良くないと言っている!!!」
「きょ、杏寿郎さん、しーっ!」
杏「君が動く度に、」
男「うぶ…西ノ宮様!!大変…大変お待たせ致しました!!」
杏寿郎が再び大きな声を出して注目を集めそうになった時、慌てた様子の男が出てきた。
そして その男はお館様の名を隠しながら杏寿郎達と話をする為の部屋へ自ら案内をし始めた。