第39章 ホテルの鬼
杏「髪を黒くする方法が無い訳ではないが…、」
杏寿郎はその様な薬が発明された事は知っていたが、時間が掛かる事を知っていたので自身の髪の毛を掴んで悩む様に眉を寄せた。
一方それを見た桜は煉獄家の誇りの色を染めたくないのだとハッとする。
「お、思ったより目立たないかもしれないです!行きましょう!!」
(杏寿郎さんが目立つのは仕方ない…私が上手く動けばいいんだ……!)
杏「そうか!良かった!では行こう!!!」
こうして杏寿郎が望んでいない事を桜は覚悟してしまったのであった。
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杏「産屋敷の名で話を通してあると思うのだが。」
男「はい、うぶ……しょ、少々お待ち下さい!!」
『産屋敷』の名を聞いたホテルマンが慌てて奥へ走って行った様子を見て桜は目を見開いた。
(お館様って一体……。それにしても…、)
杏寿郎の洋服姿見たさに途中から気が付いていた桜は最後まで黙っていたが、『洋服でなければならない』という情報は前田の嘘であり ホテルには和服の人が少なくなかった。
むしろきっちりと洋服を着こなしている杏寿郎は目立っている。