第39章 ホテルの鬼
槇「蝶…、蝶………胡蝶か…先程 鴉も言っていたな…。」
「え…槇寿郎さん、しのぶちゃんをご存知なんですか…っ?」
槇「…胡蝶の姓で柱の娘なら知っている。今もそうだと思うが蝶屋敷は代々療養施設を兼ねた屋敷だった。最後に柱合会議へ参加した時、その女主人が柱として参加していた。先代と違ってその女の姓が蝶屋敷に相応しい蝶に因んだ名だったから覚えていただけだ。」
呆けた顔で聞いている桜に気が付くと 珍しく饒舌になっていた槇寿郎は少し居心地悪そうに顔を背けた。
槇「顔だけ見せて帰ろうとしたのだが音柱の小僧に捕まって少し留まった事があるだけだ、顔も覚えていない。その時しか接点はないぞ。あの小僧はまだ生きていて杏寿郎に要らん事を吹き込んでいるとは知っていたが まさか "花" の柱も生きているとは思わなかったな。」
聞き慣れない柱の名を聞くと桜は言葉を詰まらせて目を伏せた。
その様子を見た杏寿郎が代わりに口を開く。
杏「いえ、命を落としました。今の蝶屋敷の主人は胡蝶しのぶ、恐らく父上が知る女性の妹です。俺は妹の方としか会った事がありませんが。」
槇「そうか…。妹の方は療養所で治療の仕事に専念、」
杏「胡蝶妹も柱です!!」
槇「……………だが、女で柱になるとは滅多にある事ではない。復讐など忘れて家庭を守る事が一番の幸せだ。前に来た継子、あのそそっかしい娘もやはり剣の道は諦め、」
杏「甘露寺も柱です!!!」