第39章 ホテルの鬼
そこにあったのは濃い藍色のドレスだった。
(す、素敵だけど一般宿泊客が着るものじゃない…。ステージに立つ人が着るようなとっても目立つドレスな気が……。)
だが、前田が杏寿郎に捨てられない様に気を付けた為かそのドレスの露出は意外なことに少なかった。
丈はふくらはぎの中腹部辺りまでありそうな長いもので 胸から上は肌が直接出ない様に首まで同色の厚手なレース生地で覆われる様になっており、肩から手首にかけても同じレース生地で出来ていた。
(だけど…厚手とはいえレースだとやっぱり透けてしまう…。露出と変わらないのでは…むしろかえって恥ずかしいような……。)
槇「破廉恥だろう!!!」
「ふわっ!!」
杏寿郎とは逆方向から声が聞こえ、桜は思わず杏寿郎の腕を掴んだ。
すると杏寿郎の体が跳ねる。
その反応に首を傾げながら跳ねた体の主を窺うと なんと目が輝いていた。
「…それは意外な反応です……。」
杏「いや、勿論俺の前でだけだぞ!!!」
桜はそれに納得した様に頷くとドレスを包み直してケンタに咥えさせる。
「蝶屋敷に持ってって燃やしてもらって!!」
杏「むぅっ!?」
杏寿郎は抗議しようとしたが桜の頑として譲らない目を見て残念そうに眉尻を下げながら元気良く返事をするケンタに目を遣った。