第8章 覚悟と条件
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「ご馳走さまです!とっても美味しかったです!」
桜は目を閉じ、今度は静かに手を合わせた。
そして千寿郎が注いでくれたお茶を両手で持つ。
千寿郎は、満足そうにふわふわとした表情を浮かべる桜を見て微笑んだ。
桜は満たされた心地を味わい終えると、フッと笑みを消して湯呑みに視線を落とす。
「私、さ…、覚悟は元より出来てるし、杏寿郎さんに言われて自分の身が危険に晒される事も…今ちゃんと自覚できたよ。」
桜はしっかりとした声で切り出した。
千寿郎もそれを聞くと、ハッとしたように背筋を伸ばして座り直す。
「自分で言うと傲ってるようだけど…、私がいれば生存者がぐっと増えると思う。だから私は簡単に死ねない。だけどさ………、」
そこまで言って眉毛をハの字にさせる桜。
「前線で死なないようにする術が分からないんだよね……。」
「前線なら離れて隠れてても鬼と遭遇するかもしれないよね。襲われた私を庇った人が怪我したら本末転倒だし、その人治してる間に私も殺されそうだし。」
「運動神経もよくない、全集中の呼吸ってやつで体を強くすることもできない。強くない鬼にもぱくっと食べられちゃうと思う。」
「自分の身を守れるようになるのが一番なんだろうけど、そうなるまでにどれだけの人の命を取りこぼしてしまうんだろうと思うと…」
そこまで言って桜は言い淀んでしまった。
千寿郎も少し眉を寄せる。
千「それは…恐らくですが、その続きは桜さんの代わりに考えてくださる方がいます。」
その言葉に桜はパッと顔を上げる。
「………杏寿郎さん?」
千「いえ、鬼殺隊を率いるお方です。隊の方たちはその方を…"お館様"と呼んでいます。」