第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
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千「では幸雄さんが昨夜の主菜を…?」
千寿郎の無垢な手はとうとう厨房までも及ぼうとしていた。
幸「へぇ、確かに自分が作りました…。それにしても煉獄家の…千寿郎様が何でこんな所に…?…お前らか!何でこんな場所にお連れしたんだ!危ねぇだろうが!!」
女「せ、千寿郎くんが用があって…!他のお三方の食事の事で頼みたいことがあると…。」
幸「馬鹿者!!様を取るな!!!」
千「あ、あの…っ、僕は鬼殺隊士ですらありません…。ましてや命の恩人でも…。なので普通の千寿郎として接してほしいと僕がお願いしたんです。」
そう言って千寿郎が困った様に眉を下げると幸雄も心底困った様に眉を下げる。
千寿郎は噂話をしていた女を虜にすると 父親にはまだ声を掛けないであげて欲しい事、食事は今からきっかり一時間後に持っていくと機嫌が良い事、兄には朝は用意しなくて良いが昼には倍の量を用意してあげて欲しい事、姉にも昼に喉を通り易い物を用意してあげて欲しい事についても話した。
それを聞いて当然察する。
――煉獄家の家庭を支えているのはこの子だ、と。
女「槇寿郎様には一時間後に朝食を用意して欲しいそうですよ!それから…、」
先々代当主に拾われ一ノ瀬家で働くようになってから三十年、家庭も持たずに誇りと技術だけを純粋に培ってきた気難しい幸雄でも目の前の子供が普通の子供ではないのだと気が付く。
幸「それを……、千寿郎様が……いつも………、」