第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
女「え、えっと……、お兄様と奥様が…仲睦まじくされていたので羨ましく思って話していました…。噂話などして本当に申し訳ありません…!」
そう伝えると千寿郎は ぱああっと表情を明るくさせる。
そしてぺこっとお辞儀をすると 杏寿郎達を探しに行ってしまうのではと心配する女達の予想を裏切り、『なるべく二人きりでいさせてあげて欲しい』、『料理がとても美味しかった』、『至る所の隅から隅まで磨かれていてびっくりした』、『布団がふかふかで気持ちよかった』と旅館を褒めちぎりだした為、千寿郎は図らずしてファンを作ってしまったのだった。
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杏「うむ、粗方出たようだな。」
そう話し掛けられるも指で散々掻き回された桜は返事をする余裕等無かった。
それを見ながら手拭いで更に丁寧に拭うと杏寿郎は小さく笑う。
杏「以前にもここで同じ様に掻き出した事があったな。あの時は迂闊にも君の声を坂本達に……、」
言葉を切った杏寿郎をぼんやりと見上げると桜は荒っぽく燃える瞳に青ざめた。
「だ…だめですよ……。時間がありませんし、今やっと中から出し切ったんです……。」