第7章 炎柱様への提案
一息ついてからまた杏寿郎が口を開く。
杏「もちろん鬼殺隊は君の命を軽んじる愚かな集まりではない。軽んじてはいないが、命の尊さを知っている。それ故に、残酷でも君を求めるだろう。」
杏「そして、君の果たしたい願いは危険な前線へ行かなければ叶わない。」
杏「つまり、"君を危険に晒さない事"と、"君の使命を全うする事"、これは両立しない。」
桜は瞳を揺らして、こくりと喉を鳴らした。
そんな様子を見て、杏寿郎は少し黙ってから柔らかい表情を浮かべる。
杏「だが、まだ君は鬼殺隊に関わっていない。引き返す事ができる。俺も鬼殺隊の一員ではあるが、君が望むのであれば黙っていよう。」
杏「隊の者に君の事が知れれば最後、前線まであっという間に連れて行かれるだろうからな。」
そう言って杏寿郎は桜に近付くとわしゃわしゃっと頭を撫でた。
一見乱暴そうに見えるが大きな手は熱くて優しかった。
そして杏寿郎は自分のお膳の前に戻り、僅かに残っていたおかずを食べてお茶を一気に飲み干した。
トンッと軽い音を立てて湯呑みを置くと、
杏「覚悟が決まったら教えてくれ。」
そう真剣な顔で言って先に居間を出ていった。