第7章 炎柱様への提案
杏寿郎は気持ちを切り替えるようにパッと顔を上げる。
杏「それで治すにはどのくらいの時間がかかるんだ?」
炎色の瞳はまた桜を真っ直ぐに見つめた。
「…五回ほど撫でていました。」
桜は居心地悪そうに小さく言う。
それを聞いてやはり杏寿郎の顔はまた険しくなった。
杏「鬼舞辻は、君をよく思わないだろう。」
杏寿郎は険しい顔のまま低い声を出し、桜の様子をじっと観察するように見る。
(鬼舞辻無惨…千寿郎くんが教えてくれた鬼の始祖の名前だ…)
杏「ただ治療所で働くのであれば問題ないかもしれないが、君の力は異質だ。もっと力を貸してほしいと求める声が必ず上がる。」
杏「そして一番死人が出るのは前線だ。治療所まで堪えられず死んでいった優秀な剣士を俺はたくさん見てきた。」
杏「そして、前線に出れば君の存在を鬼舞辻に知られる可能性がうんと上がる。やつは鬼を支配している。鬼を逃さず斬ったとしても知られる可能性は十分にある。」
杏「そして知られれば、君はあっけなく殺されるだろう。」
杏寿郎は躊躇うことなくはっきりとそう言い切った。
「………っ」