第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
そして、自身が伝えた情報が誤りである可能性に未だに杏寿郎が希望を抱いているのだと思うと辛そうに眉尻を下げた。
「赤ちゃん…本当にできないんです、杏寿郎さん。…ごめんなさい。」
そう小さく震える声を出す桜を杏寿郎はきつく抱き締める。
杏「辛い事を言わせてすまない。分かっている。子を作る為ではない。」
そう言うと杏寿郎は珍しく後ろめたそうな顔をした。
その珍しい顔に桜は思わず泣き止んで首を傾げる。
杏「君の話を軽んじている訳ではないのだが…ただ、煉獄家に生まれ炎柱になった以上、俺の人生は命を懸けて当たり前のものだ。そう思っていただけにこの時代に慣れぬ君が一人遺される可能性が消えて俺は正直な所ほっとした。」
杏「君が戦いに巻き込まれ命を落とす事が決まっているのなら動揺したろうが もしかすると君は川の中でまだ命を落としていないのではないか?平和な世で君が生を繋ぐ可能性があるのであれば俺はそれで良い。」
杏「それに恐らく最終決戦では治療されるより前に多くの柱が命を落とすだろう。俺も例外ではない。俺が遺される可能性もそう高くはない。」
杏「それより…、俺は今、その話より困っている事がある。」
桜は予想外の話の流れに暫く口を薄く開けたまま固まっていたが、杏寿郎の大きな目に じっと見つめられると眉尻を下げて首を傾げた。