第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
杏「つまり君は、鬼舞辻が消えるまでの間しか俺達の元に居られないと知り、今よりもっと関わりが深くなる前に去ろうと…そう思ったのだな。」
「…はい。」
杏「無理だ。もう遅い。今この様な形で君に去られたら今日から連日 煉獄家はお通夜の様になるだろう。」
「で、ですが…、どちらにせよ私は…、」
杏「ああ。それも遠くない未来だな。だがそれまででも良い。隣に居てくれ。君がこの時代にいるうちは俺の隣りに居てくれ。可能な限り長い間。」
そう言われると桜は散々流した筈の涙を再び流し、自身の頬に触れる杏寿郎の手に自身の手を重ねた。
「いいんですか……千寿郎くんも槇寿郎さんも…置いていくことになります…。杏寿郎さんも…今のうちにちゃんとした奥さんを探さないと……死んじゃうはずだったんですから相手は限られてるんですよ…私に気を遣っていたら一人になっ、」
杏「気を遣ってではない。もっと日頃から愛情表現をした方が良いか?俺がどれだけ惚れ込んでいるのか君は理解していない様だな。」
そう言うと杏寿郎は冷えてきた桜の体を抱き上げて布団に入り、温める様に背を撫でる。
杏「普段はやらないが 君は以前茶屋の旦那の疲労を取っていたな。俺と君を撫でてくれないか。」
布団に入った直後に杏寿郎のそれに従えばどうなるのか、桜は一瞬考えを巡らせたが 流石にこの話の流れでは何ともならないだろうと思い至ると杏寿郎に優しく触れていった。
自身の目を最後に撫でると桜は不安そうに杏寿郎を見上げる。
杏寿郎はその瞳を見つめ返しながら額へ優しく口付けを落とし、そのまま額を合わせた。
杏「君の中に出させてくれないか。」
唐突で杏寿郎らしからぬ発言に桜は思わず目を大きくさせた。