第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
杏「君は…!!俺がどれ程心配したと…君が俺の元から消えてしまうのではと、」
「消えるんです…ごめんなさい、ごめんなさい…っ」
予想外の言葉に杏寿郎は体を離して桜を大きな目で見つめた。
杏(そもそも…桜が俺を頼らずに周りを巻き込む行動を取るとはよっぽどの事だ。)
杏「………説明してくれないか。」
桜は謝るように杏寿郎の胸に手をついてそこに額を当てる。
「鬼舞辻を倒したら私は百年後の川の底へ戻るようです。…帰り道に…私のことだけ伝えられなくて……ごめんなさい…。」
そう言って桜が胸に当てていた手をぎゅっと握って拳を作ると杏寿郎はそれに優しく触れた。
杏「まず謝らなくて良い。君だって辛いのだろう。それに、だからと言って君を手放す気もない。安心しろ。」
杏寿郎は眉を寄せながらも桜をしっかりと抱き寄せて胸に顔を埋めさせると背をゆっくりと撫でた。
そしていつもの様に腕の中で震える息が穏やかになった事を確認すると杏寿郎は桜の肩を掴んで視線を合わせようとする。
すると桜は赤い目を隠したくて目を伏せた。
杏「桜、頼む。こちらを見てくれ。」
その言葉に視線を上げると杏寿郎の目もまた寝不足の疲れたものであった。
「きょ、杏寿郎さん…っ、ご、ごめんなさい!!寝てないのですか…?二晩も、」
杏「それは君も同じだろう。気にしないでくれ。」
そう言いながら杏寿郎は大事そうに桜の頬に手を当てると親指ですりっと撫でる。