第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
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杏「桜がそう言ったのか。」
日が昇って間もなく杏寿郎が桜を訪ねようとすると従業員の女が眉尻を下げた。
女「は、はい……。『煉獄家に相応しくない失態をして身を引く事になった為部屋を別に取った』と…もう挨拶は済ませたとお聞きしま、」
杏「挨拶などしていない。呼んできてくれないか。」
杏寿郎の言葉に怒気がこもると女は更に眉尻を下げる。
女「で、出てきて頂けそうになくて…。」
杏「では部屋まで案内して頂きたい。心配しないでくれ、俺達はまだ縁を切っていない。」
杏「………桜。」
杏寿郎が案内された部屋に呼び掛けるとコンッと何かが落ちる物音が響いた。
杏「起きているのだな。桜、俺は君と縁を切るつもりはないぞ。君がこうやってここへ閉じこもろうと、他の男の元へ行こうと…、俺は変わらない。変わらず君を求める。それでも君は口を閉ざすつもりか。」
「…………忘れてくださ、」
杏「無理だと言ったろう。諦めて訳を話してくれ。」
そう即答されると、桜は泣き腫らした赤い目を隠す様に顔を伏せながら襖を小さく開けた。
杏寿郎はそれに手を掛けて開けるとすぐに部屋へ入って襖を閉め、桜をきつく抱き締めた。