第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
(建物全体が眠ってるみたい……ううん…、誰か起きてたとしても…もう……私には関係ない………、)
真ん中の大きな中庭には月明かりが差して幻想的な雰囲気が漂っている。
寒さに身震いをして羽織の前をきゅっと握りながら導かれるように大きな桜の木の前まで寄った。
桜を一番良い位置で見られる場所には椅子が拵えてある。
そこに座ると桜は流れてきてしまう涙を拭いながら頭を冷やす様に只々桜の蕾を探した。
杏「冷えるだろう。一人で泣くなんてどうしたんだ。」
唐突に話し掛けられた桜は体を震わせると混乱し、泣いていると分かられてしまっている事も把握出来ないまま泣き顔を隠そうと逃げようとした。
しかし声と逆方向に逃げた筈なのに走った先に杏寿郎がいた為 ぴしっと固まり俯いてしまった。
杏「君の行動は読み易いな。逃げるという読みは当たって欲しくは無かったが。」
「…こ、これは一人で解決しないといけないんです。お気持ちは嬉しいですが…。」
杏「そうは言っても放っておく俺も大変心が痛む。手伝える事はないのか。」
そう問われると桜は少し黙ってから頷いた。
「ごめんなさい。」
それに小さく息をつくと杏寿郎は腕を組む。